よそにありて雲居に見ゆる妹が家に
早く至らむ歩め黒駒
- 歌の意味
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遠く離れていて雲のかなたに見える妻の家に、早く着きたい。歩め、黒駒よ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 910
詞書「道をまかりて詠み侍りける」
遠く雲のかなたに見える妻の家に早く着きたいと、乗っている黒駒に、さあ進めと呼びかける歌である。はやる心を馬への呼びかけで表し、恋人のもとへ急ぐ旅の情景を生き生きと描いている。
詞書によれば、旅の道中で詠んだ歌である。
作者の「ひとまろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
万葉集巻七に、初句を「遠くありて」とする類歌が収められている。
初句「よそにありて」は、遠く離れていて、の意である。一音多い字余りの句である。
二句「雲居に見ゆる」は、雲のかなたに見える、の意である。前歌の第九百九首の「雲居なる」と、遠いところを詠む「雲居」を共有している。
三句「妹が家に」は、妻の家に、の意である。一音多い字余りの句である。
四句「早く至らむ」は、早く着きたい、の意で、「む」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる。
結句「歩め黒駒」は、進め、黒駒よ、の意で、命令形と呼びかけで結んでいる。次歌の第九百十一首の「道の黒駒」と、黒駒を詠む二首が並び、こちらは恋人のもとへ急ぐ黒駒、次歌は帰り道の黒駒を詠んで対をなしている。本巻の第九百三首、第九百四首の「駒」を受けている。
いも:妹。男性から妻や恋人を親しんで呼ぶ語
くろこま:黒駒。毛色の黒い馬
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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雲居なる人を遥かに思ふには 我が心さへ空にこそなれ
- 次の歌
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我が帰る道の黒駒心あらば 君は来ずともおのれいななけ