古典和歌stream

忍ばむに忍ばれぬべき恋ならば
つらきにつけてやみもしなまし

歌の意味
こらえようとしてこらえることのできる恋であるならば、あの人の薄情さにかこつけて、きっぱりやめてしまっただろうに。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 940

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 こらえようとしてこらえられる恋であるならば、あの人のつれなさにかこつけて、きっとやめてしまっただろうに、と詠む歌である。相手の薄情を知りながらも、どうしても思いを断ち切ることのできない恋の苦しさを、かなわぬ仮定によって表している。

 初句「忍ばむに」は、こらえようとすると、の意で、「む」は意志を表す助動詞である。
 二句「忍ばれぬべき」は、こらえることができるはずの、の意で、「れ」は可能の助動詞「る」の連用形、「ぬべき」は、きっと…できる、の意である。初句と二句で「忍ぶ」を重ねている。
 三句「恋ならば」は、恋であるならば、の意で、事実に反する仮定を表す。
 四句「つらきにつけて」は、相手の薄情さにかこつけて、の意である。
 結句「やみもしなまし」は、やめてしまっただろうに、の意で、「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「まし」は三句の「ならば」と呼応する反実仮想の助動詞である。

しのぶ:忍ぶ。じっとこらえる
やむ:止む。終わりになる、絶える
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
恋しきは色に出でても見えなくに いかなる時か胸にしむらん
次の歌
いかでいかで恋ふる心を慰めて 後の世までの物を思はじ