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飽かざりし君がにほひの恋しさに
梅の花をぞ今朝は折りつる

歌の意味
いくら共に過ごしても飽き足りなかったあなたの美しさ、その香りが恋しくて、梅の花を今朝は折ったことだ。
鑑賞
巻第十六 雑春歌 1005

詞書「正月に人々詣で来たりけるに、又の日の朝に、右衛門督公任朝臣のもとに遣はしける」
 飽き足りなかったあなたの香りが恋しいので、今朝は梅の花を折ったと詠む歌である。詞書から、正月に人々が訪れてきた翌朝、具平親王が藤原公任のもとへ送った歌とわかる。前日に共に過ごした公任の人柄の魅力を「にほひ」と言い、梅の香に重ねて名残の思いを伝えている。ここから第千十四首まで、梅を詠む歌が続く。
 作者の具平親王は、村上天皇の皇子で、中務卿を務め、後中書王と呼ばれた。学問と詩歌に優れ、藤原公任と親しく交わった。公任は関白藤原頼忠の子で、和漢朗詠集を編んだ。

 初句「飽かざりし」は、飽き足りなかった、の意で、「ざり」は打消の助動詞、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 二句「君がにほひの」は、あなたの美しさの、香りの、の意で、「にほひ」は人柄の魅力と梅の香とを重ねている。
 三句「恋しさに」は、恋しさのために、の意である。
 四句「梅の花をぞ」は、梅の花を、の意で、係助詞「ぞ」は結句の連体形「つる」で結ぶ係り結びである。
 結句「今朝は折りつる」は、今朝は折ったことだ、の意で、「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形である。

にほひ:匂ひ。色つやの美しさ、人柄の魅力。また香り
作者
具平親王
出典
拾遺和歌集
前の歌
春来れば滝の白糸いかなれや むすべども猶あわに見ゆらん
次の歌
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな