東風吹かば匂ひおこせよ梅の花
主なしとて春を忘るな
- 歌の意味
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東風が吹いたならば、その香りを私のもとへ送ってよこせ、梅の花よ。主人がいないからといって、春を忘れるな。
- 鑑賞
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巻第十六 雑春歌 1006
詞書「流され侍りける時、家の梅の花を見侍りて」
東風が吹いたら香りを配所の自分のもとへ届けてくれ、梅の花よ、主人がいないからといって春を忘れるな、と詠む歌である。詞書から、流罪となった時に家の梅の花を見て詠んだ歌とわかる。大宰府へ左遷される菅原道真が、京の邸の梅に呼びかけ、別れを惜しむ思いを託している。後世、この梅が道真を慕って大宰府まで飛んでいったという飛梅の伝説が生まれた。結句は後に「春な忘れそ」の形でも広く知られる。
作者の「贈太政大臣」は菅原道真である。菅原是善の子で、宇多天皇に重用されて右大臣に至ったが、藤原時平の讒言によって大宰権帥に左遷され、配所で没した。死後に太政大臣を追贈された。
初句「東風吹かば」は、東風が吹いたならば、の意で、「ば」は未然形について仮定を表す。東風は春に東から吹く風である。
二句「匂ひおこせよ」は、香りを送ってよこせ、の意で、「おこせよ」は命令形であり、三句の「梅の花」への呼びかけとなっている。
三句「梅の花」は、梅の花よ、と呼びかける句で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「主なしとて」は、主人がいないからといって、の意である。本巻の第千十五首の四句と結句「花こそ宿の主なりけれ」と「主」の語を共有し、主を失った宿の梅と、花こそが主である山里の宿とが対をなしている。
結句「春を忘るな」は、春を忘れるな、の意で、「な」は禁止の終助詞である。
こち:東風。春に東から吹く風
おこす:遣す。こちらへ送ってよこす
- 作者
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菅原道真
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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飽かざりし君がにほひの恋しさに 梅の花をぞ今朝は折りつる
- 次の歌
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梅の花雪より先に咲きしかど 見る人まれに雪の降りつつ