引きて見る子の日の松はほどなきを
いかでこもれる千代にかあるらん
- 歌の意味
-
引き抜いて見る子の日の松は小さいのに、どうしてその中に千年の齢がこもっているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑春歌 1023
詞書「子の日」
子の日に引き抜いて見る小松はこれほど小さいのに、どうしてその中に千年の齢がこもっているのだろうかと詠む歌である。小さな松に千年の命が宿るという不思議を問う形で、子の日の松の長寿をことほいでいる。
作者の恵慶法師は、平安中期の僧で、播磨国の国分寺の講師を務めたとされる。中古三十六歌仙の一人で、百人一首の「八重むぐら」の歌で知られる。
初句「引きて見る」は、引き抜いて見る、の意で、子の日の小松引きをいう。
二句「子の日の松は」は、子の日に引く松は、の意である。
三句「ほどなきを」は、小さいのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。
四句「いかでこもれる」は、どうしてこもっている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
結句「千代にかあるらん」は、千年の齢なのだろうか、の意で、係助詞「か」を受けて推量の助動詞「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。次歌の第千二十四首の二句「千歳の春は」、第千二十五首の二句「松の千歳も」と、松の長寿を詠む点を共有している。
ほど:程。大きさ
ちよ:千代。千年、長い年月
- 作者
-
恵慶法師
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
誰により松をも引かん鶯の はつねかひなき今日にもあるかな
- 次の歌
-
しめてこそ千歳の春は来つつ見め 松を手たゆく何か引くべき