古典和歌stream

老いの世にかかるみゆきは有りきやと
木高き峰の松に問はばや

歌の意味
長い年月を生きてきた中で、このような立派なお出かけと深い雪とがあったことがあるかと、木高い峰の松に尋ねてみたいものだ。
鑑賞
巻第十六 雑春歌 1026

詞書「右大将実資、下臈に侍りける時、子の日しけるに」
 長く生きてきた世に、このような立派な子の日の遊びがあったかと、木高い峰の老松に尋ねてみたいと詠む歌である。詞書から、のちに右大将となる藤原実資が、まだ官位の低かった頃に子の日の遊びを催した折の歌とわかる。年を経た老松に問う形で、若い主催者の晴れやかな催しをたたえている。「みゆき」に「御幸」と「深雪」を掛け、雪の中の盛大な子の日の遊びを描いている。
 作者の清原元輔は、清原深養父の孫で、清少納言の父にあたる。梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。藤原実資は藤原斉敏の子で、祖父実頼の養子となり、のちに右大臣に至った。

 初句「老いの世に」は、長く生きてきた世に、の意で、峰の老松の長い齢をいい、老いた作者自身の身も重ねている。
 二句「かかるみゆきは」は、このようなお出かけは、の意で、「みゆき」は貴人のお出かけの「御幸」と「深雪」を掛ける掛詞である。
 三句「有りきやと」は、あったかと、の意で、「き」は過去の助動詞、「や」は疑問を表す。
 四句「木高き峰の」は、木の高くそびえる峰の、の意である。
 結句「松に問はばや」は、松に尋ねてみたい、の意で、「ばや」は自分の願望を表す終助詞である。

みゆき:「御幸(貴人のお出かけ)」と、「深雪」を掛ける
げらふ:下臈。官位の低い者
作者
清原元輔
出典
拾遺和歌集
前の歌
一本の松の千歳も久しきに 斎の宮ぞ思ひやらるる
次の歌
松ならば引く人今日は有りなまし 袖の緑ぞかひなかりける