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待てといはばいともかしこし花山に
しばしと鳴かん鳥の音もがな

歌の意味
お待ちくださいと申し上げるのは、まことに畏れ多い。せめてこの花山で、しばらくと鳴く鳥の声でもあればよいのに。
鑑賞
巻第十六 雑春歌 1043

詞書「春、花山に亭子法皇おはしまして、帰らせ給ひければ」
 お引き留めするのは畏れ多いので、せめて花山で「しばし」と鳴く鳥の声でもあればよいのにと詠む歌である。詞書から、春に亭子法皇が花山を訪れ、お帰りになろうとした折の歌とわかる。貴人を引き留めたい思いを直接は口にせず、鳥の声にその役を託そうとする、つつしみ深い名残の歌である。
 作者の遍昭は、桓武天皇の孫で、俗名を良岑宗貞という。仁明天皇に仕え、天皇の崩御を機に出家して僧正に至り、花山の元慶寺を開いた。六歌仙と三十六歌仙に数えられる。亭子法皇は宇多法皇である。

 初句「待てといはば」は、お待ちくださいと言うならば、の意で、「ば」は未然形について仮定を表す。
 二句「いともかしこし」は、まことに畏れ多い、の意で、ここで句切れとなる二句切れの歌である。
 三句「花山に」は、花山で、の意で、遍昭の開いた元慶寺のある地である。地名の「花」が、桜の咲く春の情景を響かせている。
 四句「しばしと鳴かん」は、しばらくと鳴くような、の意で、鳥の声を「しばし」と聞きなしている。
 結句「鳥の音もがな」は、鳥の声でもあればよいのに、の意で、「もがな」は願望を表す終助詞である。

はなやま:花山。山城国の地名。遍昭の開いた元慶寺がある
ていじのほふわう:亭子法皇。宇多法皇
作者
遍昭
出典
拾遺和歌集
前の歌
をちかたの花も見るべく白波の ともにや我も立ち渡らまし
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鶯の鳴きつるなへに春日野の 今日のみゆきを花とこそ見れ