- 歌の意味
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渡し守よ、早く舟を隠してしまえ。一年に二度おいでになるあなたではないのだから。
- 鑑賞
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巻第十七 雑秋歌 1085
詞書「題しらず」
一年に一度しか来ない彦星を帰らせまいと、渡し守に早く舟を隠せと呼びかける、織女の立場で詠んだ歌である。別れを惜しむ織女の切ない思いを、舟を隠してでも引き止めたいという願いで表している。
万葉集巻十の七夕の歌に、渡し守に舟を早く渡せと呼びかけ、下の句をほぼ同じくする類歌がある。
作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。万葉集を代表する歌人で、後世、歌聖と仰がれた。三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌や人麻呂歌集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
初句「渡し守」は、渡し舟の船頭への呼びかけである。
二句「はや舟隠せ」は、早く舟を隠せ、の意で、「隠せ」は命令形である。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「一年に」は、一年に、の意で、七夕の逢瀬が年に一度であることをいう。
四句「二たび来ます」は、二度おいでになる、の意で、「来ます」は「来」の尊敬語である。
結句「君ならなくに」は、あなたではないのだから、の意で、「なくに」は打消の語法に「に」がついて理由と詠嘆を表す。二句の命令の理由を述べて結んでいる。前の第千八十三首、第千八十四首の「あかぬ別れ」を、別れを拒む願いとして受けている。
わたしもり:渡し守。渡し舟の船頭
きます:来ます。「来」の尊敬語で、おいでになる
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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朝戸開けて眺めやすらん織女の あかぬ別れの空を恋ひつつ
- 次の歌
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織女のうらやましきに天の川 今宵ばかりはおりや立たまし