- 歌の意味
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天の川の川辺は涼しいけれども、その七夕の星に、扇の風をさらに貸したものだろうか。
- 鑑賞
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巻第十七 雑秋歌 1088
詞書「天禄四年五月二十一日、円融院の帝一品宮に渡らせ給ひて、乱碁取らせ給ひける負けわざを、七月七日にかの宮より内の台盤所に奉られける扇に貼られて侍りける薄物に、織りつけて侍りける」
天の川の川辺は涼しいけれども、七夕の星に扇の風をさらに貸したものだろうかと詠む歌である。詞書から、天禄四年(973)五月二十一日に円融天皇が一品宮のもとに出向いて乱碁の勝負をした折の負けわざとして、七月七日に一品宮の方から内裏の台盤所に献上された扇の、貼られた薄物に織りつけた歌とわかる。七夕の日の贈り物の扇にちなみ、二星に扇の風を貸そうと興じている。
次歌の第千八十九首も同じ折の歌で、二首がそろって扇の風を詠んでいる。
作者の中務は、宇多天皇の皇子敦慶親王と歌人伊勢との間に生まれた女性で、母とともに歌人として名高い。三十六歌仙に数えられる。
初句「天の川」は、牽牛と織女を隔てる天の川である。次歌の第千八十九首の初句と同じ語で、本巻の第千八十六首の三句「天の川」とも通じている。
二句「川辺涼しき」は、川辺は涼しい、の意である。
三句「七夕に」は、七夕の星に、の意である。
四句「扇の風を」は、扇で起こす風を、の意で、献上の扇にちなむ。次歌の第千八十九首の二句「扇の風に」と同じ語を共有している。
結句「猶や貸さまし」は、それでもやはり貸したものだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞、「まし」はためらいの意志を表す助動詞の連体形で、係り結びとなる。七夕に物を貸すという言い方は、本巻の第千八十七首の二句「我が貸す糸は」、第千九十一首の結句「衣貸す夜は」にも見られる。
らんご:乱碁。碁石を用いた遊戯の一つ
まけわざ:負態。勝負に負けた側が勝った側にもてなしや贈り物をすること
だいばんどころ:台盤所。宮中で女房たちが詰めていた所
うすもの:薄物。紗や絽など、薄く織った絹織物
- 作者
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中務
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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世をうみて我が貸す糸は七夕の 涙の玉の緒とやなるらん
- 次の歌
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天の川扇の風に霧晴れて 空澄みわたる鵲の橋