- 歌の意味
-
天の川は、扇の風によって霧が晴れて、空が一面に澄みわたり、鵲の橋がくっきりと見える。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑秋歌 1089
詞書は前の歌に続き「天禄四年五月二十一日、円融院の帝一品宮に渡らせ給ひて、乱碁取らせ給ひける負けわざを、七月七日にかの宮より内の台盤所に奉られける扇に貼られて侍りける薄物に、織りつけて侍りける」
扇の風で天の川の霧が晴れ、澄みわたった空に、二星の逢瀬のために鵲が翼を連ねて渡すという鵲の橋が見えると詠む歌である。詞書は前歌の第千八十八首と同じで、乱碁の負けわざとして献上された扇の、貼られた薄物に織りつけた歌である。前歌で二星に貸そうとした扇の風が、ここでは霧を払う風となり、逢瀬を助けるさまを描いている。
作者の中務は、宇多天皇の皇子敦慶親王と歌人伊勢との間に生まれた女性で、母とともに歌人として名高い。三十六歌仙に数えられる。
初句「天の川」は、前歌の第千八十八首の初句と同じ語である。
二句「扇の風に」は、扇の風によって、の意で、前歌の第千八十八首の四句「扇の風を」と同じ語を共有し、二首を結びつけている。
三句「霧晴れて」は、霧が晴れて、の意である。本巻の第千九十五首の四句「初秋霧の」、第千九十六首の四句「秋たつ霧も」と、秋の霧を詠む点で通じている。
四句「空澄みわたる」は、空が一面に澄みわたる、の意で、「わたる」は一面に及ぶ意を表し、結句の「橋」と縁語をなす。
結句「鵲の橋」は、七夕の夜に鵲が翼を連ねて天の川に架けるという橋で、体言止めで結んでいる。
かささぎのはし:鵲の橋。七夕の夜、鵲が翼を連ねて天の川に架けるという橋
- 作者
-
中務
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
天の川川辺涼しき七夕に 扇の風を猶や貸さまし
- 次の歌
-
琴の音はなぞやかひなき七夕の あかぬ別れをひきしとめねば