帰りにし雁ぞ鳴くなるむべ人は
憂き世の中を背きかぬらん
- 歌の意味
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春に北へ帰っていった雁が、また戻ってきて鳴いているようだ。なるほど人は、つらい世の中を捨てきれないのだろう。
- 鑑賞
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巻第十七 雑秋歌 1104
詞書「題しらず」
春に北へ帰った雁が、秋にまた戻ってきて鳴くのを聞き、一度去ってもまた戻ってくる雁のように、人がつらい世の中を捨てきれないのももっともだと詠む歌である。去っては帰る雁の姿に、憂き世を厭いながらも離れられない人の心を重ねている。
作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた神官の家の人で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。
初句「帰りにし」は、帰っていった、の意で、「に」は完了、「し」は過去の助動詞である。春に北へ帰った雁をいう。
二句「雁ぞ鳴くなる」は、雁が鳴いているようだ、の意で、「なる」は音によって推定する助動詞の連体形であり、係助詞「ぞ」を受けた係り結びである。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「むべ人は」は、なるほど人は、の意で、「むべ」はもっともだと納得する気持ちを表す。
四句「憂き世の中を」は、つらい世の中を、の意である。
結句「背きかぬらん」は、捨てきれないのだろう、の意で、「背く」は世を捨てて出家する意、「かぬ」はしきれない意、「らん」は原因を推量する助動詞である。
そむく:背く。世を捨てて出家する
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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こてふにも似たるものかな花すすき 恋しき人に見すべかりけり
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九重の内だに明かき月影に 荒れたる宿を思ひこそやれ