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岩の上の松にたとへむ君々は
世にまれらなる種ぞと思へば

歌の意味
岩の上に生える松にたとえよう、お二方の親王を。世にもまれな尊いお血筋の種だと思うので。
鑑賞
巻第十八 雑賀 1165

詞書「冷泉院の五六の親王袴着侍りけるころ、言ひおこせて侍りける」
 冷泉院の二人の親王を、岩の上に生える松にたとえよう、世にもまれな尊い血筋の種なのだからと詠む歌である。詞書から、冷泉院の第五、第六の親王が袴着の祝いをしたころに、言い送った歌とわかる。岩の上に根を張る松の堅固さと長寿に、幼い親王たちの末長い栄えを重ね、その尊い生まれをたたえている。前歌の第千百六十四首に続き、松を詠む賀の歌である。
 作者の「左大臣」は藤原道長である。藤原兼家の子で、のちに摂政太政大臣に至り、藤原氏の全盛を築いた。拾遺和歌集の成立した頃には左大臣であった。

 初句「岩の上の」は、岩の上に生える、の意で、六音の字余りの句である。岩に根を張る松の堅固さをいう。
 二句「松にたとへむ」は、松にたとえよう、の意で、「む」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌である。前歌の第千百六十四首の初句「松の根に」と、松の語を共有している。
 三句「君々は」は、あなたがたは、の意で、二人の親王を指す。「君」を重ねて、お二方を並べて呼んでいる。
 四句「世にまれらなる」は、世にもまれな、の意で、親王たちの尊い生まれをいう。
 結句「種ぞと思へば」は、血筋の種であると思うので、の意で、「ば」は已然形について原因を表し、二句でたとえた理由を倒置して示している。「種」は松の縁語である。

はかまぎ:袴着。幼児が初めて袴を着ける祝いの儀式
まれら:まれであること
たね:種。ここでは血筋、子孫
作者
藤原道長
出典
拾遺和歌集
前の歌
松の根に出づる泉の水なれば 同じき物を絶えじとぞ思ふ
次の歌
松が枝の通へる枝をとぐらにて 巣立てらるべき鶴の雛かな