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いにしへは思ひかけきや取りかはし
かく着んものと法の衣を

歌の意味
昔は思いもかけただろうか。こうして互いに取り交わして、ともに法の衣を着ることになろうとは。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1100

詞書「前大納言公任、入道し侍りて長谷に侍りける時、僧の装束法服など贈り侍るとて遣はしける」
 藤原公任が出家して長谷にいた時、僧の装束や法服などを贈るに際して添えた歌である。昔は思いもかけただろうか、取り交わしてこのように法の衣を着ることになろうとは、と詠む。若いころから宮廷でともに栄華の中にあった二人が、ともに出家して僧の衣を身につけることになった。その巡り合わせへの感慨を、法衣を贈るという場にふさわしく詠んでいる。なお原文の詞書は「前大納宮公任」とあるが、他の詞書と同じく「前大納言」の誤りと見て改めた。
 作者の「法成寺入道前太政大臣」は藤原道長である。藤原兼家の子で、摂政、太政大臣にのぼり、藤原氏の全盛を築いた。晩年に出家して法成寺を建立した。公任とは同じ年の生まれである。
 次歌の第千百一首は、本歌に対する公任の返歌である。前歌の第千九十八首、第千九十九首に続いて、長谷の公任をめぐる贈答が並ぶ。

 初句「いにしへは」は、昔は、の意である。
 二句「思ひかけきや」の「き」は過去の助動詞、「や」は反語の係助詞で、思いもかけただろうか、いやかけなかった、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「取りかはし」は、互いに取り交わして、の意で、法衣を贈り合うことを言う。
 四句「かく着んものと」は、このように着ることになろうと、の意である。
 結句「法の衣を」は、仏の教えに従う者の衣、法衣を、の意で、倒置によって四句の「着ん」の対象を示している。次歌の第千百一首の四句「法の衣を」と同じ語である。

のりのころも:僧の着る衣、法衣
にふだう:仏門に入ること、出家
ほふぶく:僧の衣服
作者
藤原道長
出典
千載和歌集
前の歌
谷風の身にしむごとに古里の このもとをこそ思ひやりつれ
次の歌
同じ年契りしあれば君が着る 法の衣をたちおくれめや