来ぬ人を下に待ちつつ久方の
月をあはれと言はぬ夜ぞなき
- 歌の意味
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来ない人を心の内でひそかに待ち続けながら、月をしみじみと美しいと言わない夜はない。
- 鑑賞
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巻第十八 雑賀 1195
詞書「延喜十七年八月宣旨によりて詠み侍りける」
来ない人を心の内でひそかに待ち続けながら、月を美しいと言わない夜はないと詠む歌である。詞書から、延喜十七年八月に宣旨を受けて詠んだ歌とわかる。月を眺めて「あはれ」と言うのは、表向きは月をめでる言葉でありながら、実は来ない人を待ちわびる心の嘆きでもあり、月見に託して秘めた恋の思いを表している。前歌の第千百九十四首に続き、訪れのない人を待つ歌である。
作者の紀貫之は、古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「来ぬ人を」は、来ない人を、の意で、訪れない恋人をいう。前歌の第千百九十四首の初句「君訪はで」と、訪れのない相手を詠む点で通い合っている。
二句「下に待ちつつ」は、心の内でひそかに待ち続けながら、の意で、「下」は表に出さない心の内をいい、「つつ」は継続を表す。
三句「久方の」は、「月」にかかる枕詞である。
四句「月をあはれと」は、月をしみじみと美しいと、の意で、「あはれ」には待ちわびる嘆きもこめられている。
結句「言はぬ夜ぞなき」は、言わない夜はない、の意で、係助詞「ぞ」を受けて形容詞「なし」の連体形「なき」で結ぶ係り結びである。二重否定によって毎夜であることを強めている。
した:下。表に出さない心の内
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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君訪はでいくよ経ぬらん色変へぬ 竹の古根の生ひかはるまで
- 次の歌
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梓弓引きみ引かずみ来ずは来ず 来ば来そをなぞよそにこそ見め