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山科の木幡の里に馬はあれど
徒歩よりぞ来る君を思へば

歌の意味
山科の木幡の里に馬はいるけれど、徒歩でやって来たのだ。あなたを思うので。
鑑賞
巻第十九 雑恋 1243

詞書「題しらず」
 山科の木幡の里に馬はあるけれど、あなたを思うので徒歩でやって来たと詠む歌である。馬に乗ればすぐに来られるのに、あえて自分の足で歩いて来たと言うことで、馬の支度を待つ間も惜しむほどの、ひたむきな思いを伝えている。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。持統天皇、文武天皇の時代に仕えた宮廷歌人で、歌聖と称される。三十六歌仙に数えられる。
 万葉集の巻十一に、二句を「木幡の山を」とし、下の句を異にする類歌が見える。

 初句「山科の」は、山城国の山科の、の意である。
 二句「木幡の里に」は、山科の木幡の里に、の意で、都から宇治へ向かう道筋にある地である。
 三句「馬はあれど」は、馬はあるけれど、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「徒歩よりぞ来る」は、徒歩でやって来た、の意で、「より」は手段を表し、係助詞「ぞ」を受けて連体形の「来る」で結ぶ係り結びである。ここで句切れとなる四句切れの歌で、結句はその理由を倒置して示している。
 結句「君を思へば」は、あなたを思うので、の意で、「ば」は已然形について原因を表す。

かち:徒歩
こはた:木幡。山城国の地名
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
思ひやる越の白山知らねども 一夜も夢に越えぬ日ぞなき
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春日山雲居隠れて遠けれど 家は思はず君をこそ思へ