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藤衣はつるる糸は君恋ふる
涙の玉の緒とやなるらん

歌の意味
喪服の藤衣からほつれ出る糸は、あなたを恋い慕って流す涙の玉を貫く緒となるのだろうか。
鑑賞
巻第二十 哀傷 1292

詞書は前の歌に続き「服脱ぎ侍るとて」
 喪服のほつれる糸は、あなたを恋い慕う涙の玉を貫く緒となるのだろうかと詠む歌である。詞書は前歌の第千二百九十一首と同じく、喪服を脱ぐ時の歌である。長く着て古びた喪服のほつれ糸を、こぼれ落ちる涙の玉を連ねる緒に見立て、喪の日々にどれほどの涙を流したか、またこれからも流すであろうかを詠んでいる。
 第千二百九十一首から第千二百九十三首までは、喪の期間を終えて喪服を脱ぐ時の歌が並んでいる。いずれも藤衣を詠み、喪服は脱いでも涙は尽きないという心を共有している。
 古今和歌集の哀傷歌に、壬生忠岑の歌として、下の句を「涙の玉の緒とぞなりける」とする類歌が見える。

 初句「藤衣」は、喪服、の意で、前歌の第千二百九十一首の初句と同じ語である。
 二句「はつるる糸は」は、ほつれる糸は、の意で、長く着て古びた喪服をいう。
 三句「君恋ふる」は、あなたを恋い慕う、の意で、亡き人をいう。
 四句「涙の玉の」は、涙の玉の、の意で、こぼれる涙を玉に見立てている。
 結句「緒とやなるらん」は、玉を貫く緒となるのだろうか、の意で、係助詞「や」を受けて推量の助動詞「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。糸と緒とが縁語である。

はつる:ほつれる
を:緒。玉を貫き通す糸
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
藤衣祓へて捨つる涙川 岸にもまさる水ぞ流るる
次の歌
限りあれば今日脱ぎ捨てつ藤衣 果てなきものは涙なりけり