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夢とこそ言ふべかりけれ世の中は
うつつあるものと思ひけるかな

歌の意味
夢と言うべきであったのだ、この世の中は。それなのに、確かに現実のものだと思っていたことだ。
鑑賞
巻第二十 哀傷 1318

詞書「相知れる人の失せたる所にて詠める」
 この世の中は夢と言うべきであったのに、現実のものと思っていたと詠む歌である。詞書から、親しくしていた人が亡くなった所で詠んだ歌とわかる。知人の死に接して、確かなものと信じていたこの世が、実ははかない夢のようなものだったと思い知った驚きと悲しみを詠んでいる。前歌の第千三百十七首に続き、親しい人の死を悼む貫之の歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
 古今和歌集の哀傷歌にも、三句を「世の中に」として収められている。

 初句「夢とこそ」は、夢であると、の意で、係助詞「こそ」は二句の已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。
 二句「言ふべかりけれ」は、言うべきであった、の意で、ここで句切れとなる二句切れの歌で、三句以下は倒置になっている。
 三句「世の中は」は、この世の中は、の意である。
 四句「うつつあるものと」は、確かに現実に存在するものと、の意で、六音の字余りの句である。初句の「夢」と「うつつ」とを対比している。
 結句「思ひけるかな」は、思っていたことだ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。

うつつ:現。現実
うす:失す。亡くなる
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
明日知らぬ我が身と思へど暮れぬ間の 今日は人こそ悲しかりけれ
次の歌
家に行きて我が屋を見れば玉笹の 外に置きける妹が小枕