墨染の色は我のみと思ひしを
憂き世を背く人もあるとか
- 歌の意味
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墨染の喪服の色を身にまとうのは、私だけだと思っていたのに、つらい世を捨てて墨染の衣を着る人もいるとか。
- 鑑賞
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巻第二十 哀傷 1333
詞書「服に侍りけるころ、相知りて侍りける女の、尼になりぬと聞きて、遣はしける」
墨染の色をまとうのは私だけと思っていたのに、つらい世を捨てる人もいるとかと詠む歌である。詞書から、作者が喪に服していた頃、親しくしていた女が尼になったと聞いて送った歌とわかる。喪服の墨染と、尼の衣の墨染とを重ね、同じ黒い衣をまとう身になったことに、驚きと感慨をこめている。次歌の第千三百三十四首は女の返しである。
作者の「よしのぶ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主大中臣頼基の子で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられ、百人一首の「みかきもり」の歌で知られる。
初句「墨染の」は、墨で染めた黒い衣の、の意で、作者の喪服をいう。次歌の第千三百三十四首の初句「墨染の」と、同じ語を共有している。
二句「色は我のみと」は、その色は自分だけと、の意で、六音の字余りの句である。
三句「思ひしを」は、思っていたのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。
四句「憂き世を背く」は、つらい世を捨てて出家する、の意で、尼になった女をいう。本巻の第千三百三十首の初句と二句「憂き世をば背かば」と、世を背く趣を共有している。
結句「人もあるとか」は、人もいるとか聞く、の意で、「とか」は伝聞を表す。
すみぞめ:墨染。墨で染めたような黒い衣。喪服や僧尼の衣
ぶく:服。喪に服すこと、喪服
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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世の中にふるぞはかなき白雪の かつは消えぬるものと知る知る
- 次の歌
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墨染の衣と見ればよそながら もろともに着る色にぞありける