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道絶ゆと厭ひしものを山里に
消ゆるは惜しき去年の雪かな

歌の意味
道が途絶えてしまうと嫌っていたのに、山里で消えてゆくとなると惜しく思われる去年の雪であることよ。
鑑賞
巻第一 春歌上 4

詞書「堀河院御時、百首歌奉りける時残雪をよめる」
 堀河百首で「残雪」を題として詠んだ歌である。冬の間は道をふさぐものとして嫌っていた雪が、春になって山里で消えてゆくとなると、かえって惜しく感じられるという心の移り変わりを詠む。同じ雪に対する冬と春とでの思いの反転に、人の心の身勝手さとともに、過ぎゆく季節を惜しむ気持ちがこめられている。
 作者の「前中納言匡房」は大江匡房である。大江成衡の子で、学者として後三条、白河、堀河の三代の天皇に仕え、権中納言に至った。博識で知られ、堀河百首の作者の一人である。

 初句「道絶ゆと」は、雪のために人の通う道が途絶えてしまうと、の意である。前歌の第三首「跡絶ゆる」と同じく、雪で閉ざされる山里の冬を背景とする。
 二句「厭ひしものを」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「ものを」は逆接で、嫌っていたのに、の意となる。
 三句「山里に」は、雪が消えてゆく場所を示す。都から離れた山里では雪が人の往来を絶つため、冬の間はなおさら疎まれた。
 四句「消ゆるは惜しき」は、春になって消えてゆくことは惜しい、の意で、二句の「厭ひし」と対をなし、心の反転を示す。
 結句「去年の雪かな」の「去年の雪」は、年が改まったことで去年降った雪となった残雪をいう。「かな」は詠嘆の終助詞で、一首を感慨深く結ぶ。

いとふ:嫌って避ける
こぞ:去年
作者
大江匡房
出典
千載和歌集
前の歌
雪深き岩の懸け道跡絶ゆる 吉野の里も春は来にけり
次の歌
春立てば雪の下水うち解けて 谷の鶯今ぞ鳴くなる