煙かと室の八島を見しほどに
やがても空の霞みぬるかな
- 歌の意味
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煙が立っているのかと室の八島を眺めているうちに、そのまま空までも霞んでしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 7
詞書「法性寺入道前太政大臣内大臣に侍りける時、十首歌よませ侍りけるによめる」
藤原忠通がまだ内大臣であったころ、人々に十首歌を詠ませた際の作である。煙の立つ歌枕として知られる下野国の室の八島を、立ちのぼるのは煙だろうかと眺めているうちに、そのまま空一面が霞んでしまったと詠む。煙と霞の見分けがつかなくなるさまに、春霞の広がりをとらえている。
作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子の源俊頼である。堀河院歌壇の中心として活躍し、白河院の命により金葉和歌集を撰んだ。千載和歌集の撰者藤原俊成が深く敬った歌人で、本集で最も多くの歌が採られている。
初句「煙かと」は、立ちのぼるものを煙かと見る心をいう。室の八島は煙を詠むのが習いであった。
二句「室の八島を」の「室の八島」は下野国の歌枕で、池から立つ水気が煙のように見えたという。
三句「見しほどに」は、見ていたうちに、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
四句「やがても空の」の「やがて」は、そのまま、引き続いて、の意で、煙と見ていたものが途切れずに空の霞へと続いていくさまを表す。
結句「霞みぬるかな」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆である。煙と見ていたものが霞と溶け合い、空一面に霞が広がったさまを詠む。
むろのやしま:下野国の歌枕で、池から立つ水気が煙に見立てられた
- 作者
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源俊頼
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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山里の垣根に春やしるからむ 霞まぬ先に鶯の鳴く
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霞敷く春の潮路を見渡せば 緑を分くる沖つ白波