今よりは梅咲く宿は心せむ
待たぬに来ます人もありけり
- 歌の意味
-
これからは、梅の咲く家では心づもりをしておこう。待ってもいないのに訪ねていらっしゃる人もあるのだったよ。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌上 19
詞書「堀河院御時、百首歌奉りける時、梅花の歌とてよめる」
堀河百首で「梅花」を題として詠んだ歌である。梅の花が咲いた家には、その香りに誘われて、待ってもいない人まで訪ねて来ることがあると気づき、これからは梅の咲くころには客を迎える用意をしておこう、と詠む。梅の香が人を呼び寄せるという趣を、軽やかな口調でとらえている。
作者の「大納言師頼」は源師頼である。左大臣源俊房の子で、大納言に至った。堀河百首の作者の一人である。
初句「今よりは」は、これからは、の意で、新たな気づきを受けた心構えを示す。
二句「梅咲く宿は」の「宿」は家、住まいをいう。
三句「心せむ」の「心す」は気を配る、用心する意で、「む」は意志の助動詞である。ここで句切れとなる。
四句「待たぬに来ます」の「ます」は尊敬の補助動詞で、待っていないのにいらっしゃる、の意である。第十五首、第十六首が来訪を求め合う贈答であったのに対し、本歌は求めずとも人の来る梅の宿を詠む。
結句「人もありけり」の「けり」は気づきの詠嘆を表し、そういう人もいたのだなあ、の意となる。
こころす:気を配る、用心する
やど:家、住まい
- 作者
-
源師頼
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
薫る香の絶えせぬ春は梅の花 吹きくる風やのどけかるらむ
- 次の歌
-
匂ひもて分かばぞ分かむ梅の花 それとも見えぬ春の夜の月