梅が香におどろかれつつ春の夜の
闇こそ人はあくがらしけれ
- 歌の意味
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梅の香りに何度も目を覚まされながら、春の夜の闇こそが、人の心をさまよい出させるものなのだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 22
詞書「題しらず」
春の夜、闇の中から漂ってくる梅の香りに何度も目を覚まされ、心が身を離れて浮かれ出てしまうと詠む。姿の見えない闇の中だからこそ、香りだけがいっそう人の心を誘うという思いを、「闇こそ」と強く言い切っている。
作者の「上東門院和泉式部」は越前守大江雅致の娘の和泉式部である。一条天皇の中宮上東門院藤原彰子に仕えた女房で、恋の歌に優れた王朝を代表する女流歌人である。
古今和歌集の凡河内躬恒の歌「春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる」と同じく、春の夜の闇と梅の香とを取り合わせる。
初句「梅が香に」は、梅の香りによって、の意で、二句の「おどろかれ」の原因を示す。
二句「おどろかれつつ」の「おどろく」は、はっと目を覚ます意、「れ」は受身の助動詞「る」の連用形、「つつ」は反復を表し、何度も目を覚まされながら、の意となる。
三句「春の夜の」は、四句の「闇」にかかる。
四句「闇こそ人は」の「こそ」は係助詞で、結句の已然形「けれ」と係り結びをなし、ほかならぬ闇こそが、と強調する。
結句「あくがらしけれ」の「あくがらし」は、心をさまよい出させる意の形容詞である。本巻の第二十六首では、梅の香自身が垣根を「あくがれて」さまよい出るさまが詠まれ、人と香とで「あくがる」主体が入れ替わっている。
おどろく:はっと目を覚ます
あくがる:心が身から離れてさまよい出る
- 作者
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和泉式部
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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梅の花折りてかざしに挿しつれば 衣に落つる雪かとぞ見る
- 次の歌
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さ夜更けて風や吹くらむ花の香の 匂ふ心地のそらにするかな