眺むれば霞める空の浮雲と
ひとつになりぬ帰る雁がね
- 歌の意味
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物思いにふけって眺めていると、霞んだ空に浮かぶ雲とひとつに溶け合ってしまった、北へ帰る雁は。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 37
詞書「帰雁の心をよみ侍りける」
「帰雁」を題として詠んだ歌である。北へ帰ってゆく雁を物思いにふけりながら見送っていると、雁の列は霞んだ空に浮かぶ雲の中に紛れ、雲とひとつになって見えなくなってしまったと詠む。遠ざかる雁を見つめ続ける心と、霞の空のおぼろな広がりとが溶け合っている。
作者の「左近中将良経」は九条良経である。摂政九条兼実の子で、千載和歌集が撰ばれたころは若き左近衛中将であった。のちに摂政太政大臣に至り、新古今和歌集の仮名序を執筆した。
初句「眺むれば」の「眺む」は、物思いにふけりながらぼんやりと見つめる意で、已然形に「ば」が付いて、眺めていると、の意となる。
二句「霞める空の」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、霞んでいる空の、の意である。
三句「浮雲と」は、空に浮かぶ雲と、の意である。
四句「ひとつになりぬ」の「ぬ」は完了の助動詞で、ここで句切れとなる。次歌の第三十八首も「ひとつに見ゆる」と詠み、本歌の雲と雁に対して、空と海がひとつに見える景を描く。
結句「帰る雁がね」は、四句の主語をあとに置いた倒置の形の体言止めで、次歌も同じ結句で結ばれる。
ながむ:物思いにふけりながらぼんやりと見つめる
かりがね:雁、またその鳴き声
- 作者
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九条良経
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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春来ればたのむの雁も今はとて 帰る雲路に思ひ立つなり
- 次の歌
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天つ空ひとつに見ゆる越の海の 波を分けても帰る雁がね