天つ空ひとつに見ゆる越の海の
波を分けても帰る雁がね
- 歌の意味
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大空とひとつに見える越の海の波を分けてでも、北へ帰ってゆく雁であることだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 38
詞書は前の歌に続き「帰雁の心をよみ侍りける」
前歌と同じく「帰雁」を題として詠んだ歌である。北陸の越の海は、果てしなく広がって大空とひとつに見えるほどであるが、その海の波を分けてでも、雁は北へと帰ってゆくと詠む。空と海の境も分からない雄大な景色の中を、ひたすら故郷を目指す雁の姿を描いている。
作者の「前右京権大夫頼政」は源頼政である。兵庫頭源仲正の子で、右京権大夫を経て従三位に至った。武士でありながら歌人として名高く、治承四年(1180)に以仁王を奉じて平家打倒の兵を挙げ、宇治で敗死した。
初句「天つ空」の「つ」は「の」の意の古い格助詞で、大空をいう。
二句「ひとつに見ゆる」は、大空と海とがひとつに見える、の意である。前歌の第三十七首「ひとつになりぬ」が雁と雲の溶け合うさまを詠んだのに対し、本歌は空と海の溶け合う景を詠む。
三句「越の海の」は、北陸地方の海をいい、六音の字余りとなる。雁の帰る北の方角を示す。
四句「波を分けても」の「ても」は、波を分けてでも、と困難を押して進むさまを表す。
結句「帰る雁がね」は体言止めで、前歌の第三十七首と同じ結句である。
あまつそら:大空
こし:北陸地方の古名
- 作者
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源頼政
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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眺むれば霞める空の浮雲と ひとつになりぬ帰る雁がね
- 次の歌
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帰る雁幾雲居とも知らねども 心ばかりをたぐへてぞやる