古典和歌stream

尋ねつる花のあたりになりにけり
匂ふにしるし春の山風

歌の意味
尋ね求めてきた花のあたりに来たのだなあ。香りが匂ってくることではっきりとわかる、春の山風によって。
鑑賞
巻第一 春歌上 46

詞書「近衛殿に渡らせ給ひて帰らせ給ひける日、遠尋山花といへる心をよませ給うける」
 崇徳院が近衛殿にお出ましになり、お帰りになる日に、「遠く山の花を尋ぬ」という題で詠んだ歌である。遠く山の桜を尋ねてゆくうちに、春の山風が運んでくる花の香りによって、目指す花のあたりに来たことがはっきりとわかったと詠む。姿より先に香りで花に近づいたことを知る趣向である。
 作者の「崇徳院御製」は鳥羽天皇の第一皇子の崇徳院である。「御製」は天皇や上皇の詠んだ歌をいう。院政期の歌壇を主導して久安百首を召したが、保元の乱に敗れて讃岐に配流され、その地で没した。

 初句「尋ねつる」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、尋ね求めてきた、の意である。
 二句「花のあたりに」は、目指す桜の咲くあたりに、の意である。
 三句「なりにけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、来たのだなあ、の意となり、ここで句切れとなる。
 四句「匂ふにしるし」の「しるし」ははっきりしている意の形容詞で、香りが匂うことではっきりわかる、の意である。
 結句「春の山風」は体言止めで、香りを運ぶ山風を示す。次歌の第四十七首は同じ日に藤原忠通が詠んだ歌で、二首で院の御幸の一日を伝える。

たづぬ:探し求める
作者
崇徳院
出典
千載和歌集
前の歌
万代の花のためしや今日ならむ 昔もかかる春しなければ
次の歌
帰るさを急がぬほどの道ならば のどかに峰の花は見てまし