咲きぬやと知らぬ山路に尋ね入る
我をば花のしをるなりけり
- 歌の意味
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花が咲いたかと、見知らぬ山道に尋ね入っていく私を、花が枝を折って道しるべをし、導いてくれていたのだなあ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 60
詞書「尋深山花といへる心をよみ侍りける」
「深山の花を尋ぬ」という題で詠んだ歌である。花はもう咲いたかと、見知らぬ深い山道へ分け入ってゆく私を、実は花の方が枝を折って道しるべとし、導いてくれていたのだと気づく歌である。花を尋ねる人ではなく、花の方が人を招き寄せるという逆転の発想に趣がある。
作者の「摂政前右大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、右大臣を経て文治二年(1186)に摂政となった。九条家の祖で、日記玉葉を残したことでも知られる。
初句「咲きぬやと」の「ぬ」は完了の助動詞、「や」は疑問で、もう咲いたかと、の意となる。
二句「知らぬ山路に」は、見知らぬ山道に、の意である。本巻の第六十二首は「知らぬ山路はなけれども」と詠み、花ゆえに知らない山路はないとして、本歌と対をなす。
三句「尋ね入る」は、尋ねて分け入る、の意の連体形で、四句の「我」にかかる。
四句「我をば花の」の「をば」は強調で、ほかならぬこの私を、の意となる。
結句「しをるなりけり」の「しをる」は、枝を折って道しるべとする意と、悩ませしおれさせる意とを重ねる。「なりけり」は、そうだったのだなあ、という気づきを表す。
しをる:枝を折って道しるべとする意と、悩ませしおれさせる意を重ねる
- 作者
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九条兼実
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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夜もすがら花の匂ひを思ひやる 心や峰に旅寝しつらむ
- 次の歌
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暮れ果てぬ帰さは送れ山桜 誰がために来て惑ふとか知る