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花盛り四方の山辺にあくがれて
春は心の身に添はぬかな

歌の意味
花盛りのころは、四方の山のあたりにさまよい出て、春は心が身に添っていないことだ。
鑑賞
巻第一 春歌上 64

詞書は前の歌に続き「賀茂社歌合とて人々よみ侍りける時、花の歌とてよめる」
 前歌と同じ賀茂社の歌合で「花」を題として詠んだ歌である。花盛りのころは、心が四方の山々へ花を求めてさまよい出てしまうので、春の間は心が身に寄り添っていない、と詠む。花に心を奪われ、身と心とが離れ離れになってしまう春の落ち着かなさを表している。
 作者の「藤原公衡朝臣」は平安末期の公卿歌人である。

 初句「花盛り」は、桜の花の盛りをいう。本巻の第五十一首も同じ初句で始まる。
 二句「四方の山辺に」は、四方の山のあたりに、の意で、本巻の第四十二首と同じ句を用いる。
 三句「あくがれて」の「あくがる」は、心が身から離れてさまよい出る意である。本巻の第二十二首、第二十六首、第四十三首に続き、花や香に誘われる心を詠む。
 四句「春は心の」は、春の間は心が、の意である。
 結句「身に添はぬかな」は、身に寄り添わないことよ、の意で、三句の「あくがれて」を受けて心と身の分離を表す。「かな」は詠嘆である。

あくがる:心が身から離れてさまよい出る
そふ:寄り添う、離れずにいる
作者
藤原公衡
出典
千載和歌集
前の歌
年を経て同じ桜の花の色を 染めますものは心なりけり
次の歌
吉野川みかさはさしもまさらじを 青根を越すや花の白波