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春を経て匂ひを添ふる山桜
花は老いこそ盛りなりけれ

歌の意味
春を重ねるごとに美しさを増してゆく山桜よ。花は老木になってこそ盛りなのだなあ。
鑑賞
巻第一 春歌上 71

詞書「毎春花芳といへる心をよめる」
 「春ごとに花芳し」という題で詠んだ歌である。山桜は春を重ねるごとにその美しさを増してゆく。花というものは、木が老いてこそ盛りを迎えるのだなあ、と詠む。年を経るほどに見事に咲く老木の桜に感じ入り、老いることで衰える人の身とは逆の、花の老いの華やぎを見いだしている。
 作者の「源仲正」は三河守源頼綱の子である。兵庫頭を務め、源頼政の父にあたる。

 初句「春を経て」は、春を重ねて、の意で、題の「春ごとに」を表す。本巻の第六十三首の「年を経て」と同じく、年月を重ねることで深まる花の美しさを詠む。
 二句「匂ひを添ふる」の「匂ひ」は花の美しい色合いや香りをいい、「添ふる」はそれを加え増す意である。
 三句「山桜」は、山桜への呼びかけで、ここで句切れとなる。
 四句「花は老いこそ」の「こそ」は係助詞で、結句の已然形「けれ」と係り結びをなし、老いてこそ、と強調する。
 結句「盛りなりけれ」の「けれ」は気づきを表す助動詞「けり」の已然形で、盛りなのだったなあ、の意となる。

そふ:加える、増す
作者
源仲正
出典
千載和歌集
前の歌
吉野山花の盛りになりぬれば 立たぬ時なき峰の白雲
次の歌
白雲と峰の桜は見ゆれども 月の光は隔てざりけり