山桜千々に心の砕くるは
散る花ごとに添ふにやあるらん
- 歌の意味
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山桜のために、心がこれほど千々に砕けるのは、散る花の一片ごとに心が寄り添っていくからなのだろうか。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 84
詞書「堀河院御時、百首歌奉りける時、桜をよめる」
堀河天皇の時代に歌人たちが百首ずつ詠進した堀河百首で、「桜」を題として詠んだ歌である。山桜が散るのを見て心が千々に砕けるように乱れるのは、散ってゆく花びらの一ひら一ひらに心が寄り添ってついてゆくからなのだろうか、と詠む。花が無数に散るのに合わせて心も細かく分かれてゆくという理知的な趣向で、桜を惜しむ心の乱れを表している。
作者の「前中納言匡房」は大江匡房である。大江成衡の子で、学者として後三条、白河、堀河の三代の天皇に仕え、権中納言に至った。博識で知られ、堀河百首の作者の一人である。
初句「山桜」は、一首の主題を示す。前の第八十一首、第八十三首と同じく山桜を詠む。
二句「千々に心の」の「千々に」は、さまざまに、細かく、の意で、心が無数に分かれるさまをいう。
三句「砕くるは」の「砕くる」は、心が砕ける、思い乱れる意の動詞の連体形で、「は」で提示する。
四句「散る花ごとに」は、散る花の一ひらごとに、の意で、二句の「千々に」と呼応して無数の花びらと無数に分かれる心とを重ねる。次歌の第八十五首も「花の散る」と詠み起こす。
結句「添ふにやあるらん」の「や」は疑問の係助詞で、「らん」と連体形で結ぶ。心が花に寄り添ってゆくからだろうか、と理由を推し量る。
くだく:心が砕ける、思い乱れる
そふ:寄り添う、つき従う
- 作者
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大江匡房
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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踏めば惜し踏までは行かむ方もなし 心尽くしの山桜かな
- 次の歌
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花の散る木の下陰はおのづから 染めぬ桜の衣をぞ着る