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下冴ゆる氷室の山の遅桜
消え残りける雪かとぞ見る

歌の意味
下のほうが冷え冷えとしている氷室山の遅咲きの桜を、消え残った雪かと見ることだ。
鑑賞
巻第二 春歌下 104

詞書「小野の氷室山の方に残りの花尋ね侍りける日、僧都証観が房にてこれかれ歌よみ侍りけるによめる」
 小野の氷室山のあたりへ散り残った花を尋ねて出かけた日に、僧都証観の僧坊で人々が歌を詠んだ折の一首である。地の底から冷え冷えとする氷室山に遅れて咲く桜を、消え残った雪かと見る、と詠む。氷を貯える氷室にちなむ山の名を生かし、冷たい山に咲く遅桜の白さを残雪に見立てている。
 作者の「源仲正」は兵庫頭源頼綱の子である。兵庫頭などを務め、源頼政の父にあたる。

 初句「下冴ゆる」は、下のほうが冷え冷えとする、の意で、氷を貯える氷室のある山の冷たさをいう。
 二句「氷室の山の」の「氷室」は、冬の氷を夏まで貯えておく室で、氷室山は山城国小野にあった山である。山の名に冷たさを重ねる。
 三句「遅桜」は、他の桜より遅れて咲く桜で、詞書の「残りの花」にあたる。散る花を詠む歌が続いたのち、ここで遅く咲き残った花が詠まれる。
 四句「消え残りける」は、解けずに残っていた、の意で、「ける」は「けり」の連体形である。
 結句「雪かとぞ見る」の「ぞ」は係助詞で、「見る」と連体形で結ぶ。遅桜を残雪に見立てる。本巻の第七十九首「麓の雪」、第九十三首「花の白雪」は散る花を雪に見立てたが、本歌は咲き残る花を消え残る雪に見立てている。

さゆ:冷え冷えとする
ひむろ:冬の氷を夏まで貯えておく室
おそざくら:他の桜より遅れて咲く桜
作者
源仲正
出典
千載和歌集
前の歌
吹く風をなこその関と思へども 道もせに散る山桜かな
次の歌
鏡山光は花の見せければ ちりつみてこそさびしかりけれ