いづかたに匂ひ増すらむ藤の花
春と夏との岸を隔てて
- 歌の意味
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どちらの側でいっそう美しく照り映えるのだろうか、藤の花は。春と夏との岸を隔てて咲いていて。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 118
詞書「土御門右大臣の家に歌合し侍りける時、藤をよめる」
土御門右大臣源師房の邸で歌合が催された際に、「藤」を題として詠んだ歌である。晩春から初夏にかけて咲く藤の花を、春と夏という二つの季節の岸を隔てて咲く花に見立て、春の岸と夏の岸と、どちらの側でいっそう美しく照り映えるのだろうか、と詠む。季節の境目を川の岸に見立てた機知的な趣向で、季節の変わり目に咲く藤の性格をとらえている。
作者の「康資王母」は四条宮筑前とも呼ばれた女房である。筑前守高階成順の娘で、母は伊勢大輔である。後冷泉天皇の皇后四条宮藤原寛子に仕え、康資王の母であることからこの名で呼ばれる。
本歌から第百二十首までの三首は、藤を詠む一連である。
初句「いづかたに」は、どちらの方に、の意で、二句の「らむ」と呼応して疑問を表す。
二句「匂ひ増すらむ」の「匂ふ」は色美しく照り映える意で、「らむ」は現在推量の助動詞である。いっそう美しく映えるのだろうか、と推し量る。ここで句切れとなる。
三句「藤の花」は、一首の主題を示す。
四句「春と夏との」は、春と夏との二つの季節を、川を挟んで向かい合う岸に見立てる。
結句「岸を隔てて」は、春の岸と夏の岸とを隔てて、の意である。藤が水辺に咲き、波に見立てられることと響き合う。本巻の第百二十首「池の藤波」も、水辺の藤を詠む。
にほふ:色美しく照り映える
- 作者
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康資王母
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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山吹の花の妻とは聞かねども うつろふなへに鳴くかはづかな
- 次の歌
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九重に咲けるを見れば藤の花 濃き紫の雲ぞ立ちける