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逢坂の山時鳥名告るなり
関守る神や空に問ふらん

歌の意味
逢坂の山の時鳥が、名を告げるように鳴いている。関を守る神が、空を行く時鳥に名を問いただしているのだろうか。
鑑賞
巻第三 夏歌 190

詞書「関路郭公といへる心をよめる」
 「関路郭公(関所の道の時鳥)」という題で詠んだ歌である。逢坂の山で時鳥が名を名告るように鳴いているのは、関を守る神が、空を越えて行く時鳥に、関所の役人のように名を問いただしているからだろうか、と詠む。時鳥の鳴き声を自らの名を名告るものとする伝統を、関所での名の取り調べに見立てた機知の歌である。
 作者の「中納言師時」は源師時である。左大臣源俊房の子で、権中納言に至った。日記「長秋記」の記主として知られ、堀河百首の作者の一人である。

 初句「逢坂の」の「逢坂」は、山城国と近江国の境にある逢坂の関で知られる歌枕である。
 二句「山時鳥」は、山にすむ時鳥をいう。本巻の第百八十八首も「山時鳥」を詠む。
 三句「名告るなり」の「名告る」は自分の名を告げる意で、時鳥の鳴き声が自らの名を呼ぶように聞こえることをいう。「なり」は推定で、ここで句切れとなる。
 四句「関守る神や」の「関守る神」は関所を守る神、「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。
 結句「空に問ふらん」の「問ふ」は名を問いただす意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、「や」の結びとなる。関所で通行人の名を問うことを、空を行く時鳥に移している。

あふさか:山城国と近江国の境にある逢坂の関で知られる歌枕
なのる:自分の名を告げる
せきもる:関所を守る
作者
源師時
出典
千載和歌集
前の歌
をちかへり濡るとも来鳴け時鳥 今いくかかは五月雨の空
次の歌
いにしへを恋ひつつひとり越えくれば なきあふ山の時鳥かな