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秋の来るけしきの森の下風に
立ち添ふものはあはれなりけり

歌の意味
秋がやって来る気配を見せる気色の森の下風に、寄り添うように立ちのぼってくるものは、しみじみとした哀れであった。
鑑賞
巻第四 秋歌上 228

詞書「百首歌奉りける時、秋立つ心をよめる」
 崇徳院に百首歌を奉った際に、「立秋」の心を詠んだ歌である。秋がやって来る気配を見せる気色の森の木の下を吹く風に、寄り添うように立ちのぼってくるものは、しみじみとした哀れの情であった、と詠む。歌枕の「気色の森」の名に秋の「けしき」を重ね、風とともに身に迫る秋の哀れを詠んでいる。
 作者の「待賢門院堀川」は神祇伯源顕仲の娘である。鳥羽天皇の中宮待賢門院藤原璋子に仕えた女房で、院政期を代表する女流歌人の一人であり、崇徳院の久安百首の作者の一人でもある。本文の「堀川」は本巻の第二百六十四首では「堀河」と記されるが、同じ人物である。
 本歌と次歌の第二百二十九首は、ともに久安百首で「立秋」を題として詠まれた歌である。前の二首が風と露という具体的なしるしで秋を知ったのに対し、本歌は秋の「けしき」と心に湧く「あはれ」を詠む。

 初句「秋の来る」は、秋がやって来る、の意で、二句の「けしき」にかかる。
 二句「けしきの森の」の「けしき」は、様子、気配の意の「気色」と、大隅国にあったとされる歌枕の「気色の森」とを掛ける。秋の来る気配を見せる気色の森、の意となる。
 三句「下風に」の「下風」は、木の下を吹く風をいう。本巻巻頭の第二百二十六首「荻の葉風」に続き、秋の訪れを風で詠む。
 四句「立ち添ふものは」の「立ち添ふ」は、寄り添うように加わる意である。風が「立つ」ことと、心に哀れが「立ち添ふ」こととを重ねる。
 結句「あはれなりけり」の「けり」は気づきを表す。秋風とともに身に迫るものが哀れの情であったと気づく心を示す。

けしき:様子、気配の意の「気色」と、大隅国(今の鹿児島県)にあったとされる歌枕「気色の森」を掛ける
したかぜ:木の下を吹く風
たちそふ:寄り添うように加わる
作者
待賢門院堀河
出典
千載和歌集
前の歌
浅茅生の露けくもあるか秋来ぬと 目にはさやかに見えけるものを
次の歌
八重葎さしこもりにし蓬生に いかでか秋の分けて来つらん