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秋の月高嶺の雲のあなたにて
晴れゆく空の暮るる待ちけり

歌の意味
秋の月は、高い峰にかかる雲の向こうで、晴れてゆく空が暮れるのを待っていたのだった。
鑑賞
巻第四 秋歌上 275

詞書「月の歌三十首よませ侍りける時、よみ侍りける」
 月の歌三十首を人々に詠ませた折に、作者みずから詠んだ歌である。秋の月は、高い峰にかかる雲の向こう側で、空が晴れてゆき日が暮れるのを待っていたのだった、と詠む。雲が晴れ、日が暮れて月が姿を現すまでの時の流れを、月が自ら待っていたように擬人化してとらえている。
 作者の「法性寺入道前太政大臣」は藤原忠通である。関白藤原忠実の子で、摂政、関白、太政大臣を歴任し、出家して法性寺殿と呼ばれた。歌壇の庇護者としても重きをなし、小倉百人一首にも歌が採られている。
 次歌の第二百七十六首は「雲吹き払ふ高嶺より」と、高嶺の雲が払われて月がのぼるさまを詠み、本歌と「高嶺」「雲」を共有する。本巻の第二百八十三首「富士の高嶺に澄む月」も高嶺の月を詠む。

 初句「秋の月」は、一首の主題を示す。
 二句「高嶺の雲の」は、高い峰にかかる雲の、の意である。次歌の第二百七十六首も「高嶺」と「雲」を詠む。
 三句「あなたにて」は、向こう側で、の意で、雲に隠れた月の居場所を示す。
 四句「晴れゆく空の」は、雲が晴れてゆく空の、の意である。
 結句「暮るる待ちけり」の「けり」は気づきを表す。月が空の暮れるのを待っていたのだと気づく心で、月を擬人化する。

たかね:高い峰
作者
藤原忠通
出典
千載和歌集
前の歌
秋の夜の心を尽くすはじめとて ほのかに見ゆる夕月夜かな
次の歌
木枯らしの雲吹き払ふ高嶺より 冴えても月の澄みのぼるかな