秋の夜は松を払はぬ風だにも
悲しきことの音を立てずやは
- 歌の意味
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秋の夜は、松の枝を吹き払うほどでもない風でさえ、悲しい琴の音のような音を立てないことがあろうか。いや、立てるのである。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 304
詞書「崇徳院に百首歌たてまつりける時、秋の歌とてよめる」
崇徳院に百首歌を詠進した折の秋の歌である。秋の夜には、松の枝を揺り動かすほどでもないかすかな風でさえ、琴の音のように悲しい音を立てる、と詠む。強い風ではなくかすかな風を選ぶことで、秋の夜にはどんなものの音も悲しく響くという、季節そのものの悲しさを表している。
作者の「藤原季通朝臣」は権大納言藤原宗通の子である。琵琶や箏など管弦の名手として知られ、崇徳院の百首歌、いわゆる久安百首の作者の一人である。
松を吹く風の音を琴の音に見立てるのは古くからの趣向で、拾遺和歌集の斎宮女御の歌「琴の音に峰の松風かよふらし」などに見える。管弦に通じた作者らしい見立てである。
初句「秋の夜は」は、時を示して一首の場面を定める。本巻の第三百九首も同じ初句で秋の夜の鹿を詠む。
二句「松を払はぬ」の「払ふ」は、吹き払う、の意である。「ぬ」は打消の助動詞で、松の枝を吹き払うほどではない、と風のかすかさをいう。
三句「風だにも」の「だに」は、〜でさえ、の意の副助詞で、かすかな風でさえ、と程度の軽いものを挙げて重いものを類推させる。
四句「悲しきことの」の「こと」は、琴の意と事の意を掛ける掛詞である。松風と琴は縁語の関係にある。
結句「音を立てずやは」の「やは」は反語で、音を立てないことがあろうか、いや立てる、と強く言い切る。
こと:楽器の琴の意と、事の意を掛ける
はらふ:風が吹き払う、払いのける
- 作者
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藤原季通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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山里は寂しかりけり木枯らしの 吹く夕暮れのひぐらしの声
- 次の歌
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露寒み末枯れもてく秋の野に 寂しくもある風の音かな