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恋ひつつや妹が打つらむ唐衣
砧の音のそらになるまで

歌の意味
恋い慕いながら妻が打っているのだろうか、唐衣を。砧の音が空に響きわたり、心も上の空になるほどまで。
鑑賞
巻第五 秋歌下 339

詞書「堀河院御時、百首歌たてまつりける時、擣衣の心をよみ侍りける」
 堀河天皇の時代に百首歌を詠進した折、擣衣の題で詠んだ歌である。遠く離れた夫を恋い慕いながら、妻が衣を打っているのだろうか、砧の音が空に響きわたり、打つ人の心も上の空になるほどまで、と詠む。砧の音を、夫を思う妻の心そのものとして聞いている。
 作者の「大納言公実」は藤原公実である。権大納言藤原実季の子で、大納言に至った。鳥羽天皇の中宮となった待賢門院璋子の父であり、堀河百首の作者の一人である。
 本歌から第三百四十一首までの三首は、同じ堀河百首から採られた擣衣の歌である。

 初句「恋ひつつや」の「つつ」は継続を表し、恋い慕いながら、の意である。「や」は疑問の係助詞で、二句の「らむ」と連体形で結ぶ。
 二句「妹が打つらむ」の「妹」は男性から妻や恋人を親しんで呼ぶ語である。「らむ」は現在推量で、ここで句切れとなる。前歌の第三百三十八首の「衣打つらん」と同じく、見えない打ち手を推し量る。
 三句「唐衣」は衣の美称で、打たれる衣を示す。次歌の次の第三百四十一首も同じ三句を置く。
 四句「砧の音の」は、前歌の第三百三十八首の「砧の音ぞ」と同じ語を用いる。
 結句「そらになるまで」の「そら」は、音が空に響きわたる意と、心が上の空になる意を掛ける掛詞である。

いも:男性から妻や恋人を親しんで呼ぶ語
からころも:衣の美称
そら:音が響きわたる空の意と、心が上の空になる意を掛ける
作者
藤原公実
出典
千載和歌集
前の歌
さ夜更けて砧の音ぞたゆむなる 月を見つつや衣打つらん
次の歌
松風の音だに秋は寂しきに 衣打つなり玉川の里