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事ごとに悲しかりけりむべしこそ
秋の心を愁へといひけれ

歌の意味
何事につけても悲しいものだった。なるほど、だからこそ「秋」の「心」と書いて「愁」というのだった。
鑑賞
巻第五 秋歌下 351

詞書「崇徳院に百首歌たてまつりける時、秋の歌とてよめる」
 崇徳院に百首歌を詠進した折の秋の歌である。秋は何事につけても悲しいものだった、なるほど、だからこそ「秋」の下に「心」と書いて「愁」の字とするのだ、と詠む。漢字の字形を分けて意味を読み解く趣向で、秋の悲しさを文字の成り立ちに見いだしている。
 作者の「藤原季通朝臣」は権大納言藤原宗通の子である。琵琶や箏など管弦の名手として知られ、崇徳院の百首歌、いわゆる久安百首の作者の一人である。
 漢字を分けて詠む趣向は、古今和歌集の文屋康秀の歌「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」に先例がある。本歌の「むべしこそ」もこの康秀の歌の「むべ」を踏まえる。

 初句「事ごとに」は、何事につけても、の意である。
 二句「悲しかりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、悲しいものだった、と実感をこめる。ここで句切れとなる。
 三句「むべしこそ」の「むべ」は、なるほど、もっともだ、の意で、「し」は強意の副助詞である。「こそ」は係助詞で、結句の「けれ」と已然形で結ぶ。
 四句「秋の心を」は、「秋」の字の下に「心」の字を書くことをいい、漢字の字形を示す。
 結句「愁へといひけれ」は、三句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ。「秋」と「心」とを合わせると「愁」の字になることをいい、文字の成り立ちに秋の悲しさを読み取る。

うれへ:嘆き悲しむこと、愁い
作者
藤原季通
出典
千載和歌集
前の歌
冴えわたる光を霜にまがへてや 月にうつろふ白菊の花
次の歌
秋にあへずさこそは葛の色づかめ あなうらめしの風のけしきや