- 歌の意味
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独り寝の涙が空に通じたのだろうか。時雨に曇っている有明の月よ。
- 鑑賞
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巻第六 冬歌 406
詞書「暁更時雨といへる心をよみ侍りける」
暁更時雨の題で詠んだ歌である。独り寝の夜に流した涙が空に通じたのだろうか、有明の月が時雨に曇っている、と詠む。夜明け前の空を曇らせる時雨を、独り寝の悲しみの涙が空にまで届いたものと見なし、人の思いと空模様とを重ねている。
作者の「摂政前右大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、右大臣を経て摂政となり、のちに関白、太政大臣に至った。日記「玉葉」を残した。
本歌と次歌の第四百七首は同じ暁更時雨の題の歌である。二首はともに三句を「通ふらむ」とし、本歌が涙と空、次歌が夢と現実との通い合いを詠んで、対をなしている。
初句「独り寝の」は、ひとりで寝ることで、恋人と離れた寂しい夜を思わせる。本巻の第四百四十四首も独り寝に霰を聞く。
二句「涙や空に」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らむ」と連体形で結ぶ。
三句「通ふらむ」の「通ふ」は行き通う、通じる意である。涙が空にまで通ったのだろうか、と推し量り、ここで句切れとなる。次歌の第四百七首も同じ三句を置く。
四句「時雨に曇る」は、時雨によって曇る、の意で、空の時雨を地上の涙と重ねる。
結句「有明の月」は体言止めである。「有明の月」は夜が明けても空に残っている月で、暁の時分を示す。
ひとりね:ひとりで寝ること
かよふ:行き通う、通じる
ありあけのつき:夜が明けても空に残っている月
- 作者
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藤原兼実
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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木の葉散るとばかり聞きてやみなまし 漏らで時雨の山巡りせば
- 次の歌
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うたた寝は夢や現に通ふらむ 覚めても同じ時雨をぞ聞く