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深山辺の時雨れて渡る数ごとに
かことがましき玉柏かな

歌の意味
深山のあたりを時雨が降り渡ってゆくたびごとに、恨みごとを言いたげに音を立てる柏の葉であることよ。
鑑賞
巻第六 冬歌 411

詞書「堀河院御時、百首歌たてまつりける時、時雨をよめる」
 堀河天皇の時代に百首歌を詠進した折、時雨の題で詠んだ歌である。深山のあたりを時雨が降り渡ってゆくたびに、恨みごとを言いたげに音を立てる柏の葉であることよ、と詠む。時雨に打たれて鳴る柏の葉の音を、何かを訴える声のように聞いている。
 作者の「中納言国信」は源国信である。右大臣源顕房の子で、権中納言に至った。堀河百首の作者の一人である。
 本歌から第四百十三首までの三首は、堀河百首の時雨の歌である。堀河百首は、堀河天皇の時代に源俊頼、藤原公実らが題を分けて百首ずつ詠んだもので、後の百首歌の規範となった。

 初句「深山辺の」は、奥深い山のあたりの、の意である。本巻の第四百十八首、第四百四十七首も「深山辺」を詠む。
 二句「時雨れて渡る」は、時雨が降りながら渡ってゆく、の意で、前歌の第四百十首の「嶺渡し」に続き、移りゆく時雨を詠む。
 三句「数ごとに」は、そのたびごとに、の意で、時雨が幾度も通り過ぎることを示す。
 四句「かことがましき」の「かことがまし」は、恨みごとを言いたげである、言いわけがましい、の意で、柏の葉の鳴る音を人の声のように聞く擬人法である。
 結句「玉柏かな」の「玉柏」は柏の美称である。「かな」は詠嘆の終助詞である。

みやまべ:奥深い山のあたり
たまがしは:柏の美称
作者
源国信
出典
千載和歌集
前の歌
嵐吹く比良の高嶺の嶺渡しに あはれ時雨るる神無月かな
次の歌
木の葉のみ散るかと思ひし時雨には 涙も堪へぬものにぞありける