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月冴ゆる氷の上に霰降り
心砕くる玉川の里

歌の意味
月の光が冷たく冴える氷の上に霰が降って、心も砕けるばかりの玉川の里よ。
鑑賞
巻第六 冬歌 443

詞書は前の歌に続き「百首歌召しける時、氷の歌とてよませ給うける」
 久安百首の氷の題で詠んだ歌である。月の光が冷たく冴える氷の上に霰が降って、心も砕けるばかりの玉川の里よ、と詠む。月と氷と霰という冬の冷たい景物を重ね、氷の上に霰が砕け散る音と光に、見る者の心までが千々に砕けるさまを描いている。
 作者の「皇太后宮大夫俊成」は権中納言藤原俊忠の子である。後白河院の院宣を受けて本集、千載和歌集を撰んだ。藤原定家の父で、小倉百人一首にも歌が採られている。
 前歌の第四百四十二首と本歌は久安百首の氷の歌で、ともに結句に「玉川」を置く。前歌が静かに輝く氷を詠むのに対し、本歌はそこに霰を降らせ、静と動の対比をなしている。

 初句「月冴ゆる」の「冴ゆ」は、冷たく澄みわたる意で、冬の月の光の冷たさをいう。
 二句「氷の上に」は、前歌の第四百四十二首の「つららゐて」と同じく、凍った川面を詠む。
 三句「霰降り」は、氷の上に霰が降って、の意である。本歌から次歌の第四百四十四首へと霰の歌が続く。
 四句「心砕くる」は、心が乱れる、思い悩む意で、氷の上に霰が砕け散るさまと重ねられている。次歌の第四百四十四首の「心砕けと」、本巻の第四百三十七首の「砕くる」と同じ語でつながる。
 結句「玉川の里」は体言止めである。前歌の第四百四十二首の「玉川の水」と対をなす。

さゆ:冷たく澄みわたる
あられ:空から降る小さな氷の粒
くだく:心が乱れる、砕ける
作者
藤原俊成
出典
千載和歌集
前の歌
つららゐて磨ける影の見ゆるかな まことに今や玉川の水
次の歌
冴ゆる夜の槙の板屋の独り寝に 心砕けと霰降るなり