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冴ゆる夜の槙の板屋の独り寝に
心砕けと霰降るなり

歌の意味
冷え込む夜、槙の板葺きの家で独り寝をしていると、心よ砕けよとばかりに霰の降る音がする。
鑑賞
巻第六 冬歌 444

詞書「閑居聞霰といへる心をよみ侍りける」
 閑居聞霰、すなわち静かな住まいで霰を聞くという題で詠んだ歌である。冷え込む夜、槙の板屋で独り寝をしていると、心よ砕けよとばかりに霰が降る音がする、と詠む。板屋根を激しく打つ霰の音を、独り寝の寂しい心をさらに砕こうとするものとして聞いている。
 作者の「左近中将良経」は摂政九条兼実の子である。のちに摂政太政大臣に至り、新古今和歌集の仮名序を書いた。書にも優れ、小倉百人一首にも歌が採られている。
 前歌の第四百四十三首の「心砕くる」を受け、本歌は「心砕けと」と霰の歌を続ける。また本巻の第四百三首、第四百四首と同じく槙の板屋で冬の音を聞き、第四百六首と同じく独り寝の夜を詠む。

 初句「冴ゆる夜の」の「冴ゆ」は冷え込む意で、前歌の第四百四十三首の「月冴ゆる」と同じ語である。
 二句「槙の板屋の」の「槙の板屋」は、槙の板で屋根を葺いた粗末な家である。本巻の第四百三首、第四百四首と同じ語である。
 三句「独り寝に」は、ひとりで寝ているときに、の意である。本巻の第四百六首と同じく、独り寝の寂しさを詠む。
 四句「心砕けと」の「砕け」は命令形で、心よ砕けよとばかりに、の意である。前歌の第四百四十三首の「心砕くる」を受ける。
 結句「霰降るなり」の「なり」は音による推定の助動詞で、霰が降る音がする、の意である。

さゆ:冷え込む
まきのいたや:槙の板で屋根を葺いた家
ひとりね:ひとりで寝ること
作者
藤原良経
出典
千載和歌集
前の歌
月冴ゆる氷の上に霰降り 心砕くる玉川の里
次の歌
朝戸開けて見るぞ寂しき片岡の 楢の広葉に降れる白雪