帰り来む程をばいつと言ひ置かじ
定めなき身は人頼めなり
- 歌の意味
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帰ってくる時期をいつと言い残してはおくまい。この先どうなるか定めのない身では、人に空頼みをさせることになるのだから。
- 鑑賞
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巻第七 離別歌 482
詞書「修行に出で立ち侍りける時、いつ程にか帰りまうで来べきと人の言ひ侍りければよめる」
修行の旅に出発する時、いつ頃帰ってくるのかと人が尋ねたので詠んだ歌である。帰ってくる時期をいつと言い残してはおくまい、この先どうなるか定めのない身では、人に空頼みをさせることになるから、と詠む。険しい山々での修行は命の危険をともなうものであり、無常の身を自覚する修行者の覚悟と、待つ人への思いやりがこめられている。
作者の「大僧正行尊」は参議源基平の子である。園城寺の僧で、大峰や熊野などで山岳修行を重ね、のちに天台座主、大僧正に至った。小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「帰り来む」は、帰ってくるであろう、の意である。本巻の第四百七十九首と同じ初句で、第四百七十九首が送る側から帰りの定まらなさをいうのに対し、本歌は旅立つ側が自ら帰りの時を言わずにおく。
二句「程をばいつと」の「程」は時期、「をば」は格助詞「を」に係助詞「は」が付いて濁ったもので、対象を強く示す。
三句「言ひ置かじ」の「じ」は打消しの意志の助動詞で、言い残してはおくまい、の意である。ここで句切れとなる。
四句「定めなき身は」は、いつどうなるかわからない身は、の意で、修行の旅に出る身の無常をいう。第四百七十九首の「程も定めぬ」と響き合う。
結句「人頼めなり」の「人頼め」は、当てにならないことを人に期待させることで、空頼みをさせることになる、の意である。
いひおく:言い残しておく
ひとだのめ:当てにならないことを人に期待させること、空頼み
- 作者
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行尊
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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忘るなよかへる山路に跡絶えて 日数は雪のふり積もるとも
- 次の歌
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頼むれど心変はりて帰り来ば これぞやがての別れなるべき