あたら夜を伊勢の浜荻折り敷きて
妹恋しらに見つる月かな
- 歌の意味
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明けるのが惜しいこの美しい夜を、伊勢の浜荻を折り敷いて旅寝をし、妻を恋しく思いながら見た月であることだ。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 500
詞書「月前旅宿といへる心をよめる」
月前の旅宿という題で詠んだ歌である。惜しむべきこの美しい夜を、伊勢の浜荻を折り敷いて旅寝をし、妻を恋しく思いながら見た月であることだ、と詠む。美しい月の夜を、ひとり旅の空で妻を恋いつつ過ごさねばならない寂しさを表している。
作者の「藤原基俊」は右大臣藤原俊家の子である。官位は低かったが、院政期の歌壇で重んじられ、藤原俊成の師となった。小倉百人一首にも歌が採られている。
万葉集の碁檀越の妻の歌に、伊勢の浜荻を折り伏せて荒い浜辺で旅寝をしているだろうかと、旅の夫を思うものがある。本歌はこれを本歌とし、旅する夫の側から妻を恋う歌に詠みかえている。「妹恋しらに」も万葉集に見える言い回しである。
初句「あたら夜を」の「あたら夜」は、明けてしまうのが惜しいほどすばらしい夜の意である。
二句「伊勢の浜荻」は伊勢国の浜辺に生える荻で、伊勢では葦をこう呼んだとされる。万葉集の碁檀越の妻の歌の語を用いる。
三句「折り敷きて」は、折って敷いて、の意で、旅寝の床とすることをいう。本巻の第五百十四首、巻末の第五百四十四首にも「折り敷く」の語が見える。
四句「妹恋しらに」の「妹」は妻や恋人、「恋しらに」は、恋しさゆえに、の意の万葉語である。
結句「見つる月かな」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞である。「月」に「かな」を添えて結び、初句の「あたら夜」に照応させる。
あたらよ:明けるのが惜しいほどすばらしい夜
はまをぎ:浜辺に生える荻で、伊勢では葦をいうとされる
をりしく:折って敷く
いも:男性から妻や恋人を親しんで呼ぶ語
- 作者
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藤原基俊
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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播磨路や須磨の関屋の板廂 月漏れとてやまばらなるらん
- 次の歌
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波の上に有明の月を見ましやは 須磨の関屋に泊まらざりせば