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波の上に有明の月を見ましやは
須磨の関屋に泊まらざりせば

歌の意味
波の上に有明の月を見ることがあっただろうか、いや見なかっただろう。須磨の関屋に泊まらなかったならば。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 501

詞書「堀河院御時、百首歌たてまつりける時、旅の歌とてよみ侍りける」
 堀河天皇の時代に百首歌を詠進した折、旅の題で詠んだ歌、すなわち堀河百首の歌である。須磨の関屋に泊まらなかったならば、波の上に有明の月を見ることがあっただろうか、と詠む。旅の宿りゆえに出会えた海上の有明の月の美しさを、反実仮想の形で強調している。
 作者の「中納言国信」は源国信である。右大臣源顕房の子で、権中納言に至った。堀河百首の作者の一人である。
 前歌までの関や浜辺の月の歌を受け、本歌は須磨の関屋から海上の月を眺めている。

 初句「波の上に」は、海の波の上に、の意で、須磨の海に傾く月の位置を示す。
 二句「有明の月を」は、明け方の空に残る月を、の意である。巻頭の第四百九十八首も有明の月を詠む。
 三句「見ましやは」の「まし」は反実仮想の助動詞、「やは」は反語で、見ただろうか、いや見なかっただろう、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「須磨の関屋に」の「関屋」は関所の番小屋で、本巻の第四百九十九首と同じく須磨の関屋を詠む。
 結句「泊まらざりせば」の「ざり」は打消しの助動詞「ず」の連用形、「せ」は過去の助動詞「き」の未然形で、「ば」とともに反実仮想の条件を表す。泊まらなかったならば、の意で、三句と倒置の関係にある。

せきや:関所の番小屋
作者
源国信
出典
千載和歌集
前の歌
あたら夜を伊勢の浜荻折り敷きて 妹恋しらに見つる月かな
次の歌
夜な夜なの旅寝の床に風冴えて 初雪降れる小夜の中山