思ふことなくてぞ見まし与謝の海の
天の橋立都なりせば
- 歌の意味
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もの思いもなく眺めることだろうに。与謝の海の天の橋立が都にあったならば。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 504
詞書「丹後国にまかりける時、よめる」
丹後国へ下った時に詠んだ歌である。夫の大江匡衡が丹後守となり、作者もともに任国へ下った折の作とされる。与謝の海の天の橋立が都にあったなら、もの思いもなくこの景色を眺められるだろうに、と詠む。名勝の美しさを認めながらも、都を離れた旅の身ではそれを心から楽しめないという、都への思いを表している。
作者の「赤染衛門」は赤染時用の娘である。文章博士大江匡衡の妻で、藤原道長の妻倫子とその娘の中宮彰子に仕えた。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「思ふこと」は、もの思い、心にかかること、の意である。
二句「なくてぞ見まし」の「ぞ」は強意の係助詞、「まし」は反実仮想の助動詞で、連体形として「ぞ」を受けて結ぶ。もの思いもなく眺めるだろうに、の意である。ここで句切れとなる。
三句「与謝の海の」は丹後国の与謝の海で、天の橋立が海を内と外とに分けている。字余りの句である。
四句「天の橋立」は与謝の海に延びる砂州で、松の並ぶ名勝の歌枕である。
結句「都なりせば」の「せ」は過去の助動詞「き」の未然形で、「ば」と合わせて反実仮想の条件を表し、都にあったならば、の意である。二句と倒置の関係にある。本巻の第五百一首も「見ましやは」と反実仮想で詠み、旅でなければ見られない景を詠む第五百一首に対し、本歌は旅の身ゆえに名勝を楽しめないと詠む。
あまのはしだて:丹後国の与謝の海にある砂州で、歌枕
- 作者
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赤染衛門
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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水の上にうきねをしてぞ思ひ知る かかれば鴛も鳴くにぞありける
- 次の歌
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宮木引くあつさの杣をかき分けて 難波の浦を遠ざかりぬる