宮木引くあつさの杣をかき分けて
難波の浦を遠ざかりぬる
- 歌の意味
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宮殿の用材を伐り出すあつさの杣山を分け入って、難波の浦から遠ざかってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 505
詞書「津の国に住み侍りけるを、美濃の国に下る事ありて、あつさの山にてよみ侍りける」
摂津国に住んでいた作者が、美濃国へ下ることになり、あつさの山で詠んだ歌である。宮殿の用材を伐り出すあつさの杣山を分け入って、住み慣れた難波の浦から遠ざかってしまった、と詠む。深い山に分け入るにつれ、住まいのあった海辺の地がはるかに遠くなったことを実感する旅の心を表している。
作者の「能因法師」は俗名を橘永愷という僧である。出家して摂津国の古曽部に住み、古曽部入道と呼ばれた。諸国を旅して歌を詠み、中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「宮木引く」は、宮殿の造営に用いる木材を引き出す、の意で、杣山を形容する。
二句「あつさの杣を」の「杣」は木材を伐り出す山で、あつさの山の杣をいう。
三句「かき分けて」は、草木を押し分けて、の意で、深い山道を進むさまをいう。
四句「難波の浦を」は摂津国の難波の海辺で、作者の住まいのあった地をいう。
結句「遠ざかりぬる」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、遠ざかってしまったことだ、と連体形止めで余情を残す。本巻の第五百二十九首も、漕ぎ行くにつれて岸の松風が「遠ざかる」と詠み、山を分ける陸の旅と沖を漕ぐ海の旅とで、遠ざかる故郷を詠む歌が対をなしている。
みやき:宮殿を造るための木材
そま:木材を伐り出す山
- 作者
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能因
- 出典
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千載和歌集
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思ふことなくてぞ見まし与謝の海の 天の橋立都なりせば
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住の江にまつらむとのみ嘆きつつ 心つくしに年を経るかな