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浦伝ふ磯の苫屋の梶枕
聞きも習はぬ波の音かな

歌の意味
浦から浦へと伝って旅をし、磯の苫屋で梶を枕に寝ると、聞き慣れない波の音であることだ。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 515

詞書は前の歌に続き「百首歌召しける時、旅歌とてよませ給うける」
 久安百首の旅の題の歌である。浦伝いに舟で旅をして、磯の苫屋で梶を枕に寝ると、聞き慣れない波の音であることだ、と詠む。都の人には聞き慣れない荒い波の音を耳にしながら眠れずにいる、海辺の旅寝のわびしさを表している。
 作者の「皇太后宮大夫俊成」は藤原俊成である。権中納言藤原俊忠の子で、皇太后宮大夫を務め、後白河院の院宣を受けて本集を撰んだ。藤原定家の父であり、小倉百人一首にも歌が採られている。
 久安百首の旅の歌の一連の七首目で、その結びである。

 初句「浦伝ふ」は、浦から浦へと伝ってゆく、の意で、海辺の舟旅をいう。
 二句「磯の苫屋の」の「苫屋」は、菅や茅を編んだ苫で屋根を葺いた粗末な小屋である。本巻の第五百三十二首も「磯の苫屋」に旅寝をすると詠む。
 三句「梶枕」は、舟の梶を枕にして寝ること、すなわち舟の上での旅寝をいう。ここで句切れとなる。
 四句「聞きも習はぬ」の「習ふ」は慣れる意で、聞き慣れない、の意である。
 結句「波の音かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、都では聞くことのない波の音への感慨をこめる。

うらづたふ:浦から浦へと伝ってゆく
とまや:苫で屋根を葺いた粗末な小屋
かぢまくら:舟の梶を枕にして寝ること、舟中の旅寝
ならふ:慣れる
作者
藤原俊成
出典
千載和歌集
前の歌
笹の葉を夕暮ながら折り敷けば 玉散る旅の草枕かな
次の歌
わたの原遥かに波を隔て来て 都に出でし月を見るかな