- 歌の意味
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岩を踏み越えて山を登り、峰の椎の小枝を折り敷いて、雲に宿を借りる夕暮れの空であることだ。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 544
詞書「円位法師がよませ侍りける百首の歌の中に、旅の歌とてよめる」
西行が勧めて詠ませた百首歌の中で、旅の題で詠んだ歌である。岩を踏み越えて山を登り、峰の椎の小枝を折り敷いて、雲に宿を借りる夕暮れの空であることだ、と詠む。険しい山の峰で、人家もなく雲の中に野宿する孤独な旅の情景を、雲に宿を借りると見立てて表している。羈旅歌の巻末を飾る一首である。
作者の「寂蓮法師」は俗名を藤原定長という僧である。藤原俊成の甥で、一時その養子となった。出家後は諸国を旅し、新古今和歌集の撰者の一人に選ばれたが、完成を見ずに没した。小倉百人一首にも歌が採られている。
本歌は羈旅歌の巻末である。巻頭の第四百九十八首は、有明の月が逢坂の関の清水に宿ると詠んで巻を開き、巻末の本歌は、旅人が峰で雲に宿を借りると詠んで巻を閉じる。月が水に宿る巻頭と、人が雲に宿る巻末とが、「宿」の趣向で呼応している。
初句「岩根踏み」の「岩根」は大きな岩で、岩を踏み越えて、の意である。
二句「峰の椎柴」の「椎柴」は椎の木の小枝をいう。
三句「折り敷きて」は、折って敷いて、の意で、野宿の床とすることをいう。本巻の第五百首、第五百十四首にも「折り敷く」の語が見える。
四句「雲に宿借る」は、峰にかかる雲の中に宿を借りる、の意で、雲の中で野宿することを見立てる。本巻の第五百二十八首では時雨が袖に宿を借り、本歌では旅人が雲に宿を借りる。
結句「夕暮の空」は体言止めで、峰の夕暮れの寂しさを余情として残す。
いはね:大きな岩
しひしば:椎の木の小枝
をりしく:折って敷く
- 作者
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寂蓮
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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東路も年も末にやなりぬらん 雪降りにけり白河の関
- 次の歌
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春来れば散りにし花も咲きにけり あはれ別れのかからましかば