いづかたの雲路と知らば尋ねまし
列離れけん雁がゆくへを
- 歌の意味
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どちらの方角の雲の通い路と知っていたならば、尋ねて行くだろうに。列から離れてしまった雁の行方を。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 564
詞書「遠き所に行きける人の亡くなりにけるを、親はらからなど、都に帰り来て、悲しきこと言ひたるに遣はしける」
遠い地方へ下っていた人が亡くなり、その親や兄弟姉妹などが都に帰ってきて悲しみを語ったので、贈った歌である。どの方角の雲の通い路と知っていたならば尋ねて行くだろうに、列から離れてしまった雁の行方を、と詠む。家族とともに旅立ちながら、ひとり遠い地で亡くなった人を、列を離れた雁にたとえ、その魂の行方を尋ねたいという思いによって、遺族の悲しみに寄り添っている。
作者の「紫式部」は越前守藤原為時の娘である。一条天皇の中宮彰子に仕え、「源氏物語」「紫式部日記」を著した。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が採られている。
初句「いづかたの」は、どちらの方角の、の意である。
二句「雲路と知らば」の「雲路」は雁などが飛ぶ空の道である。「知ら」は未然形で、「ば」が付いて、知っているならば、の仮定条件となる。
三句「尋ねまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、尋ねて行くだろうに、の意である。ここで句切れとなる。
四句「列離れけん」の「列」は雁の列で、家族の連なりをたとえる。「けん」は過去推量の助動詞の連体形で、列を離れてしまったのだろう、の意である。
結句「雁がゆくへを」は、亡き人を雁にたとえ、その魂の行方をいう。三句の「尋ねまし」に返る倒置である。
くもぢ:雁などが飛ぶ空の道
つら:列、連なり
はらから:兄弟姉妹
- 作者
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紫式部
- 出典
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千載和歌集
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悲しさはいとどぞまさる別れにし 今年も今日を限りと思へば
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年を経て君が見馴れし真澄鏡 昔の影は止まらざりけり