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荒磯の岩に砕くる波なれや
つれなき人にかくる心は

歌の意味
荒磯の岩に打ち寄せては砕ける波なのだろうか。つれない人に寄せる私の心は。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 653

詞書は前の歌に続き「百首歌奉りける時、恋の歌とて詠み侍りける」
 前歌と同じく久安百首の恋の歌である。荒磯の岩に砕ける波なのだろうか、つれない人にかける私の心は、と詠む。いくら打ち寄せても動かない岩に砕け散る波に、冷淡な相手に思いを寄せては砕ける自分の心をたとえている。結句の「かくる」は心を寄せる意に、波が岩に打ちかかる意を響かせる。
 作者の「待賢門院堀河」は神祇伯源顕仲の娘である。崇徳天皇の母待賢門院璋子に仕え、女房歌人として名高い。小倉百人一首にも歌が採られている。
 次歌の第六百五十四首は作者の妹の歌で、本歌が岩に砕ける波、次歌が岩間をゆく下水と、ともに岩に寄せる水によって恋心を詠んでいる。

 初句「荒磯の」は、波の荒く打ち寄せる磯の、の意である。
 二句「岩に砕くる」の「砕くる」は「砕く」の連体形で、岩に当たって砕ける、の意である。思いが砕ける意を重ねる。次歌の初句「岩間ゆく」と、ともに岩に寄せる水を詠む。
 三句「波なれや」の「なれや」は、断定の助動詞「なり」の已然形に係助詞「や」が付いたもので、波なのだろうか、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 四句「つれなき人に」の「つれなし」は冷淡である意で、こちらの思いに応じない人に、の意である。
 結句「かくる心は」の「かくる」は心を寄せる意で、波が岩に打ちかかる意を響かせる。

ありそ:波の荒い磯
かく:思いを寄せる。波が打ちかかる意を響かせる
作者
待賢門院堀河
出典
千載和歌集
前の歌
高砂の尾上の松に吹く風の 音にのみやは聞きわたるべき
次の歌
岩間ゆく山の下水せきわびて 漏らす心のほどを知らなん